土曜日, 4月 19, 2008

「ご冗談でしょう、ファインマンさん」と理屈っぽい友人

  • 「ご冗談でしょう、ファインマンさん」読んでいる。朝永振一郎氏らと1965年にノーベル物理学賞を受賞した物理学者ファインマンの逸話集である。
  • 大学の頃からこの本のことは知っていたが、どういうわけか読んだことがなかった。読んでみて、直に会ってみたかった人だと思った。ファインマンは子供の頃に自宅に実験室をつくっていろいろな実験をするぐらい科学が好きであり、どこまでも納得するまで議論するという感じの人である。また、運動が苦手であったそうである。そんなことを読んでいると、大学時代の同級生のSを思い出した。彼がファインマンのことを時々話していたせいもある。性格が似ているかどうかはわからないが、勉強家だったし物理の知識も豊富であった。一緒に実験をやっていると、実にいろいろ理論を持ち出してきて面白い。私も理屈っぽいほうだが、彼は群を抜いていた。彼の理屈っぽさについてちょっと面白い話を思い出した。私の妻の同級生Oさんと彼がちょっとしたデートにいったことがある。その時の話である。
  • Oさんがうどんの話をしたら、彼が「うどんは太平洋ベルト地帯で発達している。温暖な気候云々--」と滔々と述べたらしい。うどんから好きな食べ物かなんかの話をしようと思っていたところが、急に学術的な話になって目を白黒してしまったというわけだ。彼は知ったかぶりをするようなやわな学者ではない。その頃仕入れた知識で文化論を発展させたものだろう。その話を聞いた時、その状況を思い浮かべて何度もおかしさがこみ上げてきたのを思い出す。
  • ファインマンの話に戻る。彼は知的好奇心のかたまりであった。同級生達は、ちゃんと正式に紹介された上流階級の女の子達を連れてきて催す自分達のパーティにしか出席しないが、彼はどんな家柄の女の子であるか等どうでもよく、平気で町のダンスホールに出かけていたそうだ。あるときダンスホールでダンスのうまい子と何度か踊り、一緒にテーブルに着くとどうもうまくしゃべれない娘であることがわかった。どうも、彼女達がどこかのホテルへ連れて行ってくれと言っていることがわかった。普通ならもうひとつ話もわからないし、「それじゃさよなら」ということになるのだろうが、そこでしり込みせずホテルまで連れて行くのがファインマン流。さてホテルについてみると、なんと聾唖者のダンスパーティだったという話だ。そこでは、みんな手話でコミュニケーションをとっているが、仲間同士は遠慮も屈託もない。こんな機会も得がたい経験としてしまうところがすばらしい。
  • ファインマンはアグレッシブな人ではないようだ。だが、人の話で少し違うのではないかと思うと思うところをすぐ言ってしまう。だから、若いときから、物理の大御所も空気を読んで反論しない学者たちよりファインマンを気に入って頼りにしたようだ。こんな話を読んでいると、大学時代の友人Sにまた会いたくなった。

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