日曜日, 11月 02, 2008

米長さんとの対談が効いている

  • 日下公人氏の「教育の正体」を読んだ。大変に、面白かった。
  • 欧米と対等に渡り合える人材をどう育てるか、という章があり、ファンドや証券の世界の話が引いてある。優秀なファンドマネジャーは、1年に2回ぐらい大勝負をする。その本当の勝負の時に腰が引けないため準備として、小さな売買をずっと続けてマーケットの空気を吸っていることが必要なのだそうだ。
  • 日本経済は、そういう厳しい世界に入っているが、英国と米国の食い物にされている、とある。日本の教育が作っているいわゆる秀才はそういう世界に向いていない。むしろ、お金持ちが子供にピアノやバイオリンをやらせ、親はカラオケの練習をするような家の人が必要。そういう人は外国に買い付けに行って、ホームパーティで仲の言い人、気持ちがいい人として入り込むことができる。そういう人達は勉強などあまりしなくてもいい、偏差値など低くても気にしない。そういう人、安倍さんだとか麻生さんはそういう人だろう。そういう人が必要と日下さんは言っている。
  • ユダヤ人は幼いときから「タルムード」(取引実例集)を覚えることが必須とされる。そういう人達に、サラリーマンの日本人はいくらでもいたぶることができるカモの生き方に甘んじてきた。日本は品質のよい工場の競争力、底力があったからこそやれてきたが、これからは偏差値以外の世界でしたたかな人を探すべきで、それが日本にとっての人材だ。
  • 文科省をはじめとする日本の教育屋さん達が作った偏差値秀才は欧米に追いつくには役に立つ人材だったが、欧米を追い越してその上に立ち、アクションをする人材はこれまでとは別だ。
  • 本の後半の話を先に書いてしまったが、日下さんは前半では、学力不足は情緒不安が最大の原因であり、初等教育、中等教育、高等教育と分け、それぞれ情操教育、意欲を教える、知性を教えるべき。教育を商売にしている人が多すぎる。文科省は小学校の4年まで面倒を見てもらえば結構。教育権は親にある。またそもそも高等教育は国民の20%ぐらいがやればよく、それは学生の方が選択すべきという論である。また、ドイツやアメリカには文科省はない。地方に任されているとあった。基本的な話だが、私はよく知らなかった。
  • また、女性について出産育児期と勉学気を別にして「若いうちに出産と育児をすませていただき、二人以上育ててくださった方は、国立大学にはいつでも無試験入学とする」という政策が書かれていたが、議論に値する策ではないかと思った。
  • この本で面白いのは米長将棋連盟会長との対談である。米長氏の次の意見は非常に印象に残った。---今年の8月6日にブッシュが韓国に行ったことが間違いである。ブッシュは広島に来て「このようなことをして申し訳ありませんでした」と言うべきだった。ブッシュに日本に来て謝らせなかったことが決定的な間違いで、外交ルートを通じてやらせるべきだったと思う、と述べている。
  • これはまことにもっともな話で、この日に日本国民は慰霊碑に花をささげて「二度と戦争は起こしません」とか言っている。福田首相は「よりによって8月6にちに広島の上空を飛んでソウルに行って、北朝鮮の核問題を協議するなんて勘弁してもらいたい、日を変えてもらいたい、どうしてもというなら、ちょっと広島に降りてもらいたい」と言うべきだ、という米長氏の発言はまったくその通りだと思った。
  • このような当たり前の話を、正面からきちんとすることが教育問題を語るにあたってもっとも重要なことであるとは、いまさらながら教えてもらった。

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