木曜日, 10月 04, 2007

脱DNA宣言

  • ひどい降りだった。豊中駅に着いてから土砂降りの中を家まで15分歩いた。ズボンの裾はびったり足に張り付いた。かばんもぐっしょり、かばんのポケットにいれた本がその割に少ししか濡れなかったのは幸いだった。久しぶりにこんな雨の中を歩いた。たまたまかもしれないが、この夏は夕立の中を歩くことはなかったと思う。
  • 家内の治療を病室で待っている間に「脱DNA宣言」(武村政春)を読んだ。
  • DNAが遺伝子の正体というより、RNAを中心に見た見方を紹介している。その見方に立つとDNAは「RNAのバックアップコピーである」ということになる。DNAとRNAを比較するとRNAの方が古くからあり、このRNAの世界「RNAワールド」をさらに推し進めた考え方である。
  • RNAを中心に見たほうが考えやすいような現象が報告され、議論となっている。詳しく説明できないが、「RNAキャッシュ」の提言。「パラミューテーションの原因がRNAではないか」と取れる現象、等‥。
  • RNAを「遺伝子」とみなしDNAを「バックアップコピー」とみなすことで浮かんでくる世界をこの本から引用すると、
  1. 遺伝子とは、親から子へと単順位受け継がれるものではなく、固体もしくはここの細胞で発現し、その個性を決定するものである。
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  3. 遺伝子は、直接リボソームでたんぱく質合成の設計図となる。
  4. 遺伝子は細胞核にバックアップコピーがとってあり、常にそこから新しい遺伝子が生成しては消滅を繰り返す。
  5. 生物は、遺伝子そのものを受け継ぐよりも、より安定なバックアップコピーを主に子孫へ受け継ぐ方法を編み出した。
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  • これぐらいにしておくが、私にはここが最も面白かった。生意気を言わせてもらうともう少し、この見方で生命現象を見るとどんな風景が見えてくるか突き詰めて欲しかった。新しい見方の入り口に立ったと思ったら、次には、「絶対的なもの」を求める現代の悪しき風潮を批判する話が中心となっている。
  • それはそれでよいが、私には「RNA中心の見方」をもっと突き詰めると、新しい生物学の展望が見えてくるのではないか。「絶対的なものを求める風潮はよくない」という社会的な哲学の貧困にもってくるより、もっともっと面白い世界があるのに、どうして、そちらへ行くのかという気がした。
  • 勿論著者は、この本の主題をそこへもっていこうとしているのだから、著者に言うのは筋違いであるのは承知している。ただ、面白くなるところで切られた番組と言う感じが残った。

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