土曜日, 9月 22, 2007

鬼十則

  • 阪急梅田駅の紀伊国屋で本を買ったら、レジの後ろの棚にあった本に目が止まり、その本を手にとって、結局もういっぺんレジを通ってしまった。
  • 電通「鬼十則」(植田正也)という文庫本だ。「鬼十則」は電通の中興の祖として知られる吉田秀雄社長が起草したビジネスの原理原則を示したものである。この「鬼十則」を知ったのは確か35ぐらいの頃ではなかったかと思う。題名を見て、本をめくると、その頃のことを思い出した。
  • 大学、大学院と研究者を志向していたが、Dr取得後、周囲にOD(オーバードクター)があふれている状況を見て、大学に職を求めることはやめ、企業の研究者となることとした。勤務が研究所であるとはいえ、やはり企業である。研究者として自分の才能を信じて、真理を探究すればよいのだというような単純な考えしかもっていなかった自分を反省して、就職を機会に世間に通用するようここ構えを作り直そうと考えた。そこで、「企業物」と言われるような小説をたくさん読んだ。城山三郎さんのものをたくさん読んだ覚えがある。
  • 研究所勤めにも馴染み、ある程度自分で計画をたて仕事を進めるようになってきたら、自分の裁量が増えてくる。それにしたがって、仕事の方向はこれでよいのか、方法は正しいか疑問を持つようになってくる。研究者を自任してた私は他でやられているようなテーマはやりたくなかった。自分でテーマを見つけるんだと思っていた。ただし、企業の目的は社会に役立つことである。研究の面白さのみ追求するのではなく、その研究が企業や社会にどのような意味をもっているのか。真の目標は何か。そのために自分としてはどう進むべきか。
  • そんなことを考え出した頃、この「鬼十則」に出会った。
  • まず、その一で、ガツンとやられた。
  • 「仕事は自ら創る可きで与えられる可きでない」
  • テーマは新しいものを見つけようと思っていたが、社会に役立つために何を作るべきかは、「上から目標が与えられるものだ」というような気持ちがどこかにあったことを思い知らされた。ほんとうにこれまでにない新しいテーマというのは、これまでにあったテーマより社会に役立つものでなければならない。それは「上」(上司、社長、会社)が決めてくれるのではない。「上」は、これまでの経験、つまり、こうすればうまくいった(こうやったら失敗した)という経験を持っているだけである。「下」は新しい考えをもって「上」にぶつかっていく。「上」は「まだ考えが足らん」とブラッシュアップの手伝いをしてくれるだけである。経験だけでは、より役に立つモノはできない。「アイデア」を上と下、左右がともに出し合って切磋琢磨することがなければ良い「モノ」などできるはずがない。
  • そういうことはなんとなくは、分かっていてもこうもハッキリ直接的に言われると逃げられない。正面から向かっていく以外ない。こんな調子で10の原則には当時、唸りっぱなしであった。
  • アマゾンの書評を見ると、「鬼十則」の中身の評価はともかく、この本の主張そのものに対する評価はいまいちのように書かれたものもあった。本の評価は読んでからにして、とりあえず、「鬼十則」を思い出させてくれた著者に感謝して、前と同じように、この十則を机の前に書いて貼っておこう。

  • (夕食)ご飯、刺身(マグロ、鯛、甘エビ、はまち、サーモン)、豆腐、お吸い物

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