木曜日, 4月 24, 2008

がっかり

  • 最近読んだニュースの中でがっかりしたものは、次の記事である。
  • siRNA医薬開発に対照の罠、少なくとも加齢黄斑変性症の効果は、2重鎖RNAの配列非特異的なIL2とIFNγ誘導が原因
  • siRNA医薬の応用で現在もっとも進んでいるとされているのは、加齢黄斑変性症への適用である。siRNAの働くのは細胞の中で、mRNAを壊すことだから、効果は発揮するためには、組織の細胞に入らなければならない。ところが、RNAは水溶性の高分子であり、容易には細胞内に入らないから、何らかの工夫が必要である。DNAやRNAが本体のウイルスは、その宿主の細胞に入るために特別な仕組みを持っている。人工のRNA分子を望みの組織へ、細胞へと運ぶのは難しい。注射で投与できればいいのだろうが、血液に入ってからたとえば肝臓に到達させようとすると、コレステロールのように肝臓に取り込むレセプターがある分子をくっつけて、コレステロールが取り込まれる仕組みを利用して取り込ませるなどの工夫がされているが、なかなか満足の行く結果が得られていない。
  • siRNAが病変部へうまく取り込まれるといわれているのが、この加齢黄斑変性症である。つまり眼球(という組織)に直接投与するので、血管から組織に入るより効率的だというわけだ。そして、その加齢黄斑変性症でsiRNAの効果が証明された。医薬の世界の言葉でPOC(Proof of Concept)がとれたといわれていた。その重要な試験に不備があったという話である。
  • その不備というのはsiRNAの効果そのものに関する話ではなくて、試験の方法がきっちりしたものでなかったということだ。報告を詳しく見ていないのと、最近の多くの仕事をフォロウしていないので、実際siRNAの臨床試験でのPOCがとれているのかとれていないのかはっきりいうことはできないが、医薬としてのsiRNAが最低限のPOCをクリアしているものと思っていた私にとっては、ちょっと、いやかなりがっかりする話であった。

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