- 「千年、働いてきました―老舗企業大国ニッポン」(野村 進著)を読んだ。
- 著者によると、アジアの中で日本は長く続いた企業(老舗企業)が群を抜いて多いそうである。歴史を誇る中国や他のアジア諸国との背景を比較しているが、携帯に利用されているようなハイテクを老舗企業がいかにして生み出したかというような実例を丹念に取材した話が面白い。特に興味深かったのが、林原(岡山の老舗企業)の研究開発の話であった。
- まず、老舗企業の共通項として5つ挙げられている。
- 同族経営は多いものの、血族に固執せず、企業存続のためなら、よそから優れた人材を取り入れるのを躊躇しないこと。
- 時代の変化にしなやかに対応してきたこと。
- 時代に対応した製品を生み出しつつも、創業以来の家業の部分は、頑固に守り抜いていること。
- それぞれの”分”をわきまえていること。
- 「町人の正義」を実践してきたこと。(売り手と買い手とが、公正と信頼を取引の基礎にすえてきた)
- 林原は社長の個性的な方針の下、研究開発で優れた成果(有名なのは、インターフェロンやトレハロース)を挙げていることが注目されている。「林原」は本の最後で紹介されているのだが、このような研究開発の方針が老舗企業の一般的な強みに関連していることが興味を刺激した。
- 「林原建社長の持論」を紹介しておく。大企業に勤める私としてはそのまま取り入れることは難しく、社員のモチベーション等についてもっと突っ込んで聞いてみたい点もあるが、独創的な研究をするのに必要なことを考えるため、参考になる意見だと思っている。
「誰にもまねのできない独創的なものを創る」
そのための研究は、10~30年のような期間がかかり、多数の株主に同意を取ることの必要な大企業にはできない。
それを可能にするために、同族経営・非上場の強み、「社長が替わらない」、「株主の顔色をうかがわずに済む」を生かす。
肝心なことは、研究開発の責任の所在を常にはっきりさせていること。
つまり「アイデアを出したのが社員だったとしても、テーマを設定した責任はすべて社長が負うと公言する。それで社員は責任意識に縛られたり、失敗を恐れて萎縮したりせず、大胆に発想し、研究だけに打ち込める」