火曜日, 11月 20, 2007

学習の高速道路

  • 「ウェブ時代をゆく」(梅田望夫)を読み始めた。
  • 羽生善治二冠が唱えた「学習の高速道路と大渋滞」の考え方についての論考が詳しく書いてある。高速道路というのは、ウェブの環境が整えられたことによって、専門家になるための学習が容易になったことを指す。誰でもがこの高速道路を使ってある地点まで達することができるため、そのある地点に多くの人が到達し、大渋滞が起こるというのである。しかし、その大渋滞を通り抜け本当の専門家になるのは大変であるという現実も指摘している。
  • 確かにこの考え方は面白い。私にとっては、このようなWebの高速道路を使って専門家への道を突っ走った人についてあまり知識がなかった。その例として、「Ruby」のまつもとゆきひろ、「ZebOS」の石黒邦宏、「女流棋士」の里見香奈らの名前が挙げられているが、彼らの話がまず面白かった。そして、梅田氏の語る自身の履歴が面白かった。
  • 私がWebを利用して感じたところと通じる部分がたくさんあったと思う。私の場合、高校までは数学が好きであり、物理特に素粒子に心惹かれたが、大学の学部課程に進んでから、分子生物学に夢中になった。ATGCによって遺伝子が規定されていること、遺伝子がDNAの構造の中にはめこまれていることを発見したワトソン・クリックの業績があまりに見事だったからだ。生物という高校までは、むしろ避けてきた学問にかかわるような仕事に進むことになったけれど、それは不思議に見える生物現象が物理や化学のことばで理路整然と語られるその落差、美しさに引かれたからだ。
  • 無味乾燥な暗記などは最小限だけにして、どちらかというと原理原則だけ知っておれば後は考えるだけで理解できる物理や科学によって生物も解かれるのだというところが気に入ったのだった。論理的に説明されるべき生物・医学現象は数が多く多様であればあるほどchallengingである。その生物・医学現象は多く知れば知るほどよい(暗記はいやだけど)。そのような知識を得るのにWebがよい。Webによってさまざまな知識がいくらでも手に入るという感覚をもったのは、10数年前からのような気がする。googleが出て一気に加速された感じだ。
  • 将棋やプログラミングなどとくらべて、生物や医学の分野は高速道路はまだ不十分である。蛋白質の構造はまだ、アミノ酸配列だけ与えても十分とけない。DNA配列はわかっても、それが意味するところは、蛋白質をコードするほんの1-2%以上の情報は、ほんの少ししか解かれていない。
  • だから、梅田氏の言う「高速道路を過ぎた後のけもの道」の話が面白い。けもの道は自分で道を切り開いていくのである。自分で苦労したことは、人の話の中にも形を変えて見つけられる。

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