- 福岡伸一さんの新刊「動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか」を読んだ。月刊誌「ソトコト」という月刊誌に連載されていた文章を再編集したものだそうだ。
- 氏はデカルト的な生命の機械論的理解に偏った現在の考え方は制度疲労を起こしていると指摘している。対する考え方として、一つが「動的平衡」、イクイリブリアムの考え方である。私たちの体のあらゆる組織や細胞の中身は常に作り変えられ、更新され続けている。「生命は自己複製可能なシステムである」という20世紀的な見方だけでは生命のもつきわめて重要な特性「可変的でありながらサスティナブル(永続的)なシステムである」という視点が反映されていないことを憂いている。
- 福岡さんはこの本では、ユダヤ人科学者、ルドルフ・シェーンハイマーにスポットライトを当てる。彼はまさに生命が分子レベルにおいても循環的にサスティナブルなシステムであることをアイソトープを使って最初に「見た」のであった。福岡さんは教科書で習っていたが多くの人が素通りしていた考え方にスポットライトを当ててくれている。「生物と無生物のあいだ」ではオズワルド・エイブリーの紹介が印象に残る。
- たしかに動的平衡は、多くの物理学者が生物を理解するための手がかりとした概念であった。大学時代に勉強しようと思ったがなかなか勉強が深まらなかった。ワトソン、クリックに始まるDNAからの機械論的理解に偏り、あえて通り過ぎてきたような気がする。福岡さんは良い視点を時宜にかなって提示したのではないだろうか。
木曜日, 5月 21, 2009
「動的平衡」を読んだ
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