・「自滅するアメリカ帝国 日本よ独立せよ」を読了をした。
・中島孝志氏の「キラーリーディング」で紹介されていた本。著者はアメリカ在住の国際政治アナリストで、アメリカの傲慢な戦略とそれがうまくいかなくなってきている現状をクリアに説明している。頭の整理に大変役に立った。
以下簡単に内容のメモを紹介する。
まずアメリカの戦略の内容。
・アメリカ外交はもともと「国際政治に、アメリカのイデオロギーをそのまま持ち込む。世界諸国を、アメリカのイメージに合わせて作り替えようとする」という特異な性格をもち、「アメリカをカんウンター・バランスする能力を持つ国の出現を許さない」という政策をとっていた。第2次大戦後、ソ連が挑戦者として出現するまでアメリカは1極体制が作れると思っていた。米ソ陣営の対立が顕在化したため2極構造の存在を認めるグランド・ストラテジーをとらざるを得なかった.
・1989年にベルリンの壁が崩れて東西陣営の対立が終わると米政府はすぐに「世界を1極構造にして、アメリカだけが世界を支配する。他の諸国が独立したリーダーシップを発揮したり、独自の勢力圏を作ろうとすることを許さない」というグランド・ストラテジーを作成した。公式の席では日本に対して「日米同盟は、価値観を共有する正解で最も重要な2国間同盟だ」としておきながら実際には日本を”潜在的な敵性国”と見なして強制的な貿易政策を押し付けてきた1990年代の米政権のやり方は権力の乱用でもあった。
・このような「世界1極化」グランド・ストラテジーの戦略案は同盟国のアメリカに対する信頼感を裏切る内容となっていたため米政府は同盟諸国に、1極覇権戦略の内容を知られたくなかった。この内容はペンタゴンの機密文書に具体的に記述されたが、この文書がニューヨーク・タイムズ紙とワシントン・ポスト紙にリークされた。
・同盟国を敵国扱いするなという批判はあったが、ホワイトハウスや国務省等は賛成していた。
このストラテジーがうまく行かなくなっている。その説明として以下のような点をあげている。
・アメリカの戦力は強力であるが、米軍が個々の戦闘においてゲリラ戦士を徹底的に殺戮し「百戦百勝」してもアメリカによる長期的な世界支配と国際構造の一極化には繋がらない。
・核兵器を何千発も持っても、先制攻撃をかけ、それに対する報復としてたった1発の核弾頭を自国の大都市に撃ち込まれる可能性を予想するだけで、先制攻撃をかける意欲をなくしてしまう。つまり、必要最小限の自主的な核抑止力をもつだけで対抗できる。
最後に、日本に対して、
これまでのように米軍は中国の脅威からアジア諸国を守るという約束を遂行するだけの軍事予算はなくなって来ている。2020年代になると、財政危機と通過危機を引き起こした米政府は「米軍が、中東と東アジアを同時に支配し続ける」という国家戦略をギブアップせざるを得なくなる、と指摘している。アメリカが中東から撤退できなければ、撤退するのは東アジアとなる。単純な依存主義の外交ストラテジー、「日米同盟を深化させよ」とか「集団的自衛権を認めよ」といったスローガンで済む話ではない。